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インサイト発見の手がかりになる「人間が持つ普遍的な欲求」とは

[fa icon="calendar"] Oct 14, 2014 10:24:00 AM / by 佐藤 寛丈

 トピックス: 考え方, インサイト

「気が付けば、今年もあと2か月と少しですね。」とこのコラムを書き始めて、時間の経つ速さにビックリしました(笑)

年齢を重ねれば重ねるほどに一年が短く感じてしまう、あの現象ですかね。気になったんで調べてみると、これ心理学的に「ジャネーの法則」と呼ばれるものがあるみたいです。初めて知りましたが、ふむふむ、なるほどといった感じです。

あっ、話が脱線してしまいそうなので、興味がある方は、後ほど調べてみてくださいね。

さて、今現在、広告やマーケティングで成果を上げるためには、インサイトを捉えることが非常に重要だといわれています。

そもそもインサイトって何?

インサイトって、よく使われるようになった言葉ですが、捉え方は人によってまちまちであり、けっこう曖昧模糊なキーワードですよね。意味を再確認するためにもインサイトという言葉を調べてみました。

Wikipediaのマーケティング版的な存在であるMarketingPedia(マーケティング用語集Wiki)で調べると、

消費者インサイト(コンシューマー・インサイト、Consumer Insight)とは、消費者の行動原理や、行動の背景にある意識構造を見通した結果得られる、購買行動の核心やツボのこと。インサイト(Insight)は直訳すると「洞察」「直感」「発見」。

と定義されています。

うーん、簡単にいえば、マーケティングにつながる消費者が潜在的に持つ欲望といった感じになるでしょうか。潜在的にもっている欲望だけがインサイトになり、それ以外のものはインサイトとは言えないってことでしょうね。

インサイトを捉えることが今なぜ重要なのか?

良い商品を出せば、売れる時代ではなくなり、モノが欲しいという気持ち自体が生活者の中で減ってきているといわれています。

商品のスペックや価格では、購買意欲を刺激することが難しくなり、生活者の心を掴まないと、なかなか振り向いてもらえない時代になってきていることが、このインサイトを捉えることの大切さにつながっているんだと考えています。

「インサイトを広告表現や商品開発に取り入れることで、ターゲットの心を動かし、購入へとつなげる。」

そのためには、肝心要となるインサイトを発見する必要性がありますが、そのインサイトを見つけるための手がかりとは?というのが、今回のテーマです。

インサイトを見つけるための手がかりは?

「そうそう!実はそれがやりたかった!」
「なるほど。確かにあったらいいね!」

インサイトを見つけるには、そんな心の琴線に触れるスイッチのようなものを探す旅にでることになりますが、そのスイッチを探すための手がかりとは何なのでしょうか。

先日、講義を受けさせていただいた博報堂ケトルの嶋 浩一郎さんの言葉をお借りすると、顕在化している欲望は氷山の一角で、見えていない潜在的な欲望は、氷山の水面下のように無数にあるといわれていました。

氷山解説

人はもともと欲望を自ら表に出すのは苦手であるということ。そして、多くの場合で、自分自身では気付いていなかったり、うまく言葉にできずにもやもやとしている感情のようなものとして、潜在的な欲望を持っているといえるのではないかと思います。

そう考えれば、潜在的な欲望というのは、ありのままの姿では表れていないため、言葉としては語られておらず、データにもほとんどなっていません。

例えば、「車の燃費をもっといいものにしたい」「もっと環境にやさしくエコな車が欲しい」といった欲望は、顕在化している欲望です。すでに言語化され、燃費や環境に優しいタイヤ、HV車や電気自動車といったエコカー商品として発売されていたり、それに合わせた広告表現が取り入れられたりしますよね。

顕在化している欲望は、今の情報化社会では、ほとんどが言語化され、データ化されている可能性があります。裏を返せば、自社ターゲットの潜在的な欲望を見つけるためには、地道にターゲット個々の気持ちや感情を知り、掘り起こすといったような感じで見つけていくことが求められてくると言えます。

自社ターゲットの何気ない一言や行動から本質的な意味や価値を感じとれるかどうかがインサイト発掘のポイントといった感じですが、あまり手がかりがなく、雲をつかむような話です。

そこで、人間が持つ普遍的な欲求を知り、そこからアプローチするということが、インサイトを見つけていく手がかりの一つになると思うんですよね。

なぜ人の普遍的な欲求を知ることが、インサイトを発見する手がかりになるのか?

時代は変わっても、人間の基本的な欲求は変わることはありません。そして、その欲求を満たそうと心や感情は動き、行動へとつながります。

人は誰にでも共通する基本的な欲求があり、生物学的にそれはプログラムされているということをアメリカのダイレクトレスポンス広告界の第一人者であるドルー・エリック・ホイットマンは提唱しています。以下の8つの欲求は、生物学的な欲求であるため、人間心理に働きかける非常に強いものだそうです。

  1. 生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい。
  2. 食べ物、飲み物を味わいたい。
  3. 恐怖、痛み、危険を免れたい。
  4. 性的に交わりたい。
  5. 快適に暮らしたい。
  6. 他人に勝り、世の中に遅れを取りたくない。
  7. 愛する人を気遣い、守りたい。
  8. 社会的に認められたい。

また、上記の欲求ほど強いものではありませんが、生まれつき備わっていない後天的な欲求として9つの強い欲求があるとしています。

  1. 情報が欲しい。
  2. 好奇心を満たしたい。
  3. 身体や環境を清潔にしたい。
  4. 能率よくありたい。
  5. 便利であってほしい。
  6. 信頼性、質のよさが欲しい。
  7. 美しさと流行を表現したい。
  8. 節約し、利益を上げたい。
  9. 掘り出し物を見つけたい。

見てみると、誰にでもあてはまりそうですし、納得といった感じですよね。

これらの普遍的な欲求を知ることは、その欲求に属するインサイトを見つけ出す手がかりになるのでは?というのが私の考えなんです。

例を挙げて考えてみたいと思います。

自社商品はアイスクリームを取り扱っていて、今の顧客の中心は子供なので、狙いたいターゲットは大人だとします。ターゲットである大人は、アイスクリームに対してどんなインサイトを持っているのか、普遍的な欲求を手掛かりに考えてみます。

■「アイスクリーム」×「食べ物、飲み物を味わいたい欲求」

アイスクリームに関係する欲求としては、生物学的な欲求の一つ、「2.食べ物、飲み物を味わいたい」という欲求が、まずは当てはまりそうです。

「味わいたいという本来の欲求はあるはずなのに、なぜ今のアイスクリームは大人に受け入れられていないのか?」を起点に考えてみます。

「味わいたいと思っているけど、大人の口には今のアイスは合わないから?」と考えると、大人に食べてもらっても美味しいと言ってもらえているので何か違う。じゃあ、「大人には受け入れられていないが、子供に受け入れられているのは何で?大人にも味わいたいという欲求はあるはずなのに」と考えると、今までのパッケージデザインや価格帯といったところも含めて、大人にとってアイスクリームは、幼稚な食べ物という風に思っているのでは?裏を返せば、本当は食べたいけど、子供の食べ物だから食べていないんじゃないか?という風に考えられます。

はい、これは「アイスクリームは子供の食べ物」というインサイトを見つけ、大人が楽しめるプレミアムアイスクリームを作って大成功をおさめた「ハーゲンダッツ」が当てはまりますよね。

※桶谷 功氏の著書、「インサイト」の中に取り上げられているハーゲンダッツの事例を参考に考えてみました。

■「アイスクリーム」×「好奇心を満たしたい欲求」

では次に、相性が良さそうな後天的な欲求の一つ、「2. 好奇心を満たしたい。」という欲求で考えてみます。

「好奇心を満たしたい」という欲求に対して、アイスクリームで出来ることは残されていないのか?

アイスクリームは、甘いというのが前提と思っているのではないか?その前提を取り払い、斬新で、意外性のあるアイス、遊び性の要素を持たしたアイスを市場に投入すれば、ターゲットの好奇心を満たせるのではないか?という風に考えられます。

これでいうと、大ヒットした「ガリガリ君リッチコーンポタージュ」が、当てはまりそうです。どんな味なのか食べてみたいという好奇心をくすぐり、ただ食べるだけでなく、「溶かしてポタージュとして食べてみた」といった具合に、アレンジされ、ソーシャル上で拡散し、話題になりましたよね。

■「アイスクリーム」×「便利であってほしい欲求」

それでは、最後にもう一つ、後天的な欲求の一つである「5.便利であってほしい」という欲求で考えてみます。

「アイスクリームを、もっと便利に食べることはできないか?」を考えます。

通常のカップアイスクリームは、スプーンもいるし、両手で食べなければいけなくて不便です。棒アイスであれば、片手で食べられますが、アイスが溶けて、手が汚れてしまうこともあり不便です。パソコンなど、何かをしながらても便利にアイスを食べたいというインサイトがあるのではないかと考えられます。

これでいうと、チアパック容器を使って飲むアイスとして商品化してヒットした「クーリッシュ」が当てはまりそうです。何かをしながらでも便利に片手で食べられるアイスですよね。

最後に

いかがでしょうか?何の取っ掛りもない状態からインサイトを探るよりも、普遍的な欲求を起点に考えてみると、整理しながら考えることができるし、インサイトを探るのに有力な手がかりになるんじゃないかと思うわけです。

人間が持つ普遍的な欲求を知ることで、ターゲットが水面下に抱え、解決されていない不満、不便、不安といった文句にはどんなものがあるのか。そして、その文句の裏返しである潜在的な欲望、インサイトにはどんなものがあるのかを見つけ出すために、人間の普遍的な欲求が、手がかりの一つとして、使えるんじゃないでしょうか。

佐藤 寛丈

著者: 佐藤 寛丈

株式会社大和広告 イマジナクトラボ研究員 岡山県生まれ。岡山大学卒。大学卒業後、プログラム開発、人材コーディネーターを経て、2009年に大和広告入社。 大和広告では、プランニング、PPC運用を担当。またイベント企画運営などにも携わっている。さまざまなマーケティング手法に触れる中、根幹である人間心理の理解こそがもっとも重要と感じ、現在、心理学を勉強中。趣味は料理。

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